腹膜透析とは
PDでは僅かな細菌でも腹膜炎症状が出やすいです。
排液混濁、腹痛、発熱、悪寒、嘔吐、下痢、低蛋白血症、除水能低下等
自覚症状及び排液検査による
・白血球排液より、白血球数が100個/μL以上、かつ好中球が50%以上
・グラム染色や培養による起炎菌の検出
(混濁時はその排液を検査することがのぞましい)
混濁がなくなるまでの洗浄(フィブリン析出時はヘパリンを添加)し、抗菌剤をエンペリックセラピーにより投与
比較的軽い発赤など軽症である場合でも注意を要し、早期に治療を開始する必要があります。
発赤、腫脹、疼痛、熱感、浸出液、排膿、不良肉芽組織の形成、外部(第2)カフの移動
出口部の頻回消毒や洗浄、感受性のある抗生剤の投与(全身・局所)、肉芽形成時は硝酸銀液などによる焼灼処置を検討する。
アンルーフィング(感染部分を切開し開放創とする)、カフシェービング(感染したカフを削り取る)、出口部変更術
CAPDのカテーテルの先端はダグラス窩に向けて挿入されており、固定はしていないことが多いです。
何らかの原因でその位置から逸脱した状態をカテーテル位置異常と呼びます。
自覚症状もなく、注排液や除水量に問題なければ自然に戻るのを待つこともあります。
注排液不良、除水不全、無症状のこともある
注排液不良を伴わない場合はそのまま様子を見ることがある。階段昇降や縄跳びによる物理刺激による自然回復。透析液のバッグ加圧や生理食塩水によるフラッシュ、便秘治療、ガイドワイヤーやαリプレイサーによる修復術、腹腔鏡や下腹部切開示指挿入矯正法による修復。
注排液不良
造影検査によるオクトパスサイン
下腹部切開示指挿入矯正法による修復、腹腔鏡による修復(腹壁固定術を追加施行する場合もある)
月経周期によるもの(生理・排卵)、腹膜炎、カテーテル移動による腹膜損傷、手術後、腹腔内臓器からの出血 (潰瘍・膵炎・多発性嚢胞腎・アミロイドによる組織損傷 等)、EPS(被嚢性腹膜硬化症)、止血能異常(ビタミンK⽋乏、凝固因⼦⽋乏)
生理的出血の場合は経過観察を行い、閉塞のリスクがある場合は透析液の貯留、ヘパリンの混注を検討する
イレウス症状(腹痛、吐気、嘔吐)、低栄養、るい痩、下痢、便秘、微熱、血性排液、限局もしくはびまん性の腹水貯留、腹 部に塊状物を触知
腹膜透析の中止、イレウスに対して治療、ステロイド療法(CRP陽性で感染症が否定される場合)、癒着剥離術(内科的治療 で改善しない⼜は反復の場合)
先天的⽋損、栄養状態の低下、るい痩など
外科的処置(縫合閉鎖法(縫縮術)、メッシュ法)、自己血や薬剤注入による胸膜癒着
腹腔内貯留液が多かったり、腹圧が加わると、腹膜の脆弱な部分から腸が脱出します。
患部の腫脹、疼痛
ソ径ヘルニア、腹壁ヘルニア、臍ヘルニアなど
ヘルニア根治術、貯留量減量と交換回数の増加、低濃度透析液の使用
腰痛、便秘、脂質異常、高血糖、陰嚢水腫
体重増加、浮腫、胸水貯留、呼吸困難
事故などによるカテーテルや接続チューブ破損、汚染など
CAPD災害マニュアルはこちらからダウンロードできます
状況 | 患者に指導する対応 | 医療者の対応 | 注意点 |
---|---|---|---|
排液混濁 | スタッフに連絡 気づいた時点の排液を持参し受診する |
持参された排液を検査 (白血球数・分画・培養など) 洗浄の実施の検討 エンペリックセラピーによる抗菌剤投与 |
細菌性腹膜炎以外の腹膜炎との鑑別 乳び排液の可能性を考慮する |
腹痛 | スタッフに連絡 排液の混濁を確認する |
(混濁ありの場合:腹膜炎を疑い上記対応参照) 混濁なしの場合:原因の調査 |
細菌性腹膜炎以外の腹膜炎も想定する |
出口部・皮下トンネルの異常 | スタッフに連絡 消毒・洗浄の回数を増やす |
出口部ケアの方法の確認と再指導 抗菌剤(外用・内服・点滴)の投与 |
軽症であっても急激な悪化のリスクがあり、カテーテル抜去のリスクもあることを考えて対応する |
注排液不良 (フィブリン混入・位置異常) |
チューブラインの確認 注排液のしやすい体位を確認 スタッフの連絡 |
バッグの加圧 レントゲン撮影による位置確認や造影による閉塞の確認 位置修復術 |
階段上りやジャンプなどで改善することもあり。自宅で対応できることは指導しておくこともある |
接続チューブの汚染 | スライドクランプを閉じる 汚染部より体側を、緊急用クランプや輪ゴムなどで括る スタッフへ連絡 |
汚染状況によりチューブ交換を実施 | 汚染状況により抗菌剤の投与 |
アダプターのゆるみ・はずれ チューブの亀裂 |
スライドクランプを閉じる 汚染部より体側を、緊急用クランプや輪ゴムなどで括る 異常部を消毒液を含んだガーゼなどで包む スタッフに連絡 |
汚染状況によりチューブ交換を実施 | 汚染状況により抗菌剤の投与 |
血性排液 | スタッフに連絡 血性排液を持参し受診する |
腹部の打撲など原因を確認し、継続した出血がある場合は治療を行う 出血による閉塞リスクがある場合は止血剤や透析液へヘパリン混注を考える |
若い女性の場合生理、排卵に合わせた生理的出血のケースがある 長期PD患者ではEPS発症の可能性も考慮 |
器材の不備 | 使用をしない スタッフに連絡 |
不良品を預かった場合はメーカーへ連絡する | 不良品があれば病院へ持参 落とすなど、不潔にしたものは使用しない指導を徹底する |
APD装置の異常 | JMSコールセンターに連絡 (0120-503-956) |
APD装置は年に一度の保守点検がある |